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フランス人の郷愁を
誘う香ばしさ — きな粉

第8回 The Mystery of Japanese Ingredients

Taste Festival

ル・コルドン・ブルー東京校 ル・コルドン・ブルー東京校 菓子講座シェフ講師 ジャン−フランソワ・ファヴィ

プラリネのような香りに驚きと魅了

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豆腐や豆乳、味噌そして「きな粉」も、もともとは大豆。大豆を煎って粉末状にしたのが「きな粉」。たんぱく質や植物繊維を豊富に含むことから、注目を集めているヘルシーな食材のひとつ。その「きな粉」にシェフが初めて出合ったのは、7年前のことだ。

「きな粉を初めて口にしたのは、家族での京都旅行。私にとっては初来日でした。きな粉の香りは、ヘーゼルナッツをローストしたプラリネの香ばしさに似ていたので驚きました。どことなく故郷のフランスが思い出され、懐かしい気持ちになったことを覚えています」

家族旅行の思い出も重ね合わせながら、今回シェフは「きな粉」のタルトを創作した。

「昔、砂糖が貴重だった時代、日本では甘味料としてきな粉を使っていたそうですね。今回は、その素朴な甘みと特有の香ばしさを生かしたタルトをつくってみようと思いました」

きな粉が紡ぐ味わいと食感のハーモニー

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日本では、旧暦の9月13日を「十三夜」と呼び、月を愛でる風習がある。現在では、月見団子を供えるのが一般的だが、かつては、この時期に収穫期を迎える大豆を供える習慣があったのだとか。ちなみに、偶然にもこの日はシェフの誕生日。どうやらシェフと「きな粉」は、切っても切れない仲のようだ。

「私ときな粉は運命で結ばれているのかもしれませんね(笑)」

今回シェフは、「きな粉」の他に柚子、抹茶といった和の食材も取り入れた。そして、こだわったのは食感だという。

「土台の生地、フィナンシェ、クリーム、ギモーブといった異なるテクスチャーの組み合わせを考えました。きな粉は非常に乾燥していて粒子が細かいので、土台の生地やクリームに混ぜ込み、食べやすくなるように工夫しました」

バリエーション豊かな食感のタルトのできあがり。一口頬張ると、まずファースト・ノートに柚子の爽やかな香りとギモーブのふんわりとした食感が訪れる。次に、栗のまろやかな甘みが広がり、ラストには抹茶の風味が抜ける。これらの個性豊かな食材を上手に繋いでいるのが「きな粉」の香ばしさなのだ。

土台のタルト生地には少量の「きな粉」を混ぜ、敷き詰めた フィナンシェ生地には
抹茶を使用。「きな粉」と栗のクリーム を載せ、柚子のギモーブをデコレーション。

海外にも浸透していくはず

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抹茶や柚子といった日本の食材は、欧米諸国ですでによく知られている。では、「きな粉」に関してはどうだろうか。

「きな粉特有の味や香りはプラリネに似ているため、欧米でも浸透していくはず。ただ、取り扱い方が課題ですね。今回のように油脂成分とうまく組み合わせて、溶けにくさや粉っぽさを克服すれば、海外でも受け入れられる食材になると思います。」

タルトをつくり終えたシェフは、最後にこう話してくれた。

「きな粉のプラリネなんてあったら、使ってみたくなるでしょう? 日本には、想像力と工夫次第で可能性が無限に広がる食材がまだまだたくさんあります。次はどんな食材に出合えるのか、楽しみですね」



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