インタビュー:タイ校卒業生 石田牧子
2023年5月、富山県南砺市に開店したタイ料理店「サムラップ」。金土日のみ営業の隠れ家的レストランにも関わらず、本格的なタイ料理を提供する名店として既に評判、地元客はもちろん、遠くから足を延ばす人やファンの予約が絶えません。
ル・コルドン・ブルー東京校 パン講座 テクニカル・ディレクター ステファン・レナ
「私が初めて味噌と出合ったのは来日してすぐ。
そう、味噌汁です。何の違和感もなく、好きになりました。
ステファン・レナシェフがこの食材と出合ったのは7年前。
「日本人なら誰もが親しむ味ですから、これから日本で料理をしていくなら、味噌を使わない手はないだろう、すぐにそう思いました」
味噌は日本に古くからある食材のひとつ。起源は9世紀にまで遡るとされる。
原料は大豆と米。それらを発酵・熟成させて作るのだが、地域によって米の代わりに麦を使うところ、大豆のみを使うところがあり、熟成期間を変えるなど、製法も様々。その違いによって味はもちろん、香りや色も異なる味噌が作られる。味噌は、日本全国に数え切れないほどの種類がある食材なのだ。
数ある味噌の中から、パンに加える食材として、“赤味噌”と“白味噌”を選んだシェフ。それぞれの特性を活かし、数種類のパンを焼き上げた。
「赤味噌は少し塩味が強く、香りも印象深かったので、パン・ド・カンパーニュやバゲットのようなハードパンが合うと考えました。逆に、白味噌は甘さを感 じる味。こちらはクロワッサンやブリオッシュのようなヴィエノワズリーが合う。」
クロワッサンに加えた白味噌はパサついた仕上がりにならないよう、豆乳で溶き伸ばしてから使うなど、ひと工夫。 「味噌を加えたパンですが、焼き立てが美味しいのはもちろんのこと、冷めるにつれて味わいに変化が現れたのも驚きでした。味噌の繊細な風味がより引き立つのです。興味深い発見でした」
来日するまで、味噌と似た味の食材に出合ったことがなかったとシェフは言うが、思い返せば、フランスには多くの発酵食品がある。ワインなどの酒、チーズ、それからシュークルート、アンチョビなどなど。そして、もちろんパンも発酵食品の一種なのだ。
「私はパン職人。発酵食品は馴染み深い食材です」
さらに、シェフが続ける。
「昨日作ったヴィネグレットソースには、オリーブオイルにレモンや醤油、味噌を合わせました。新鮮な野菜にかけて食べたら、とっても美味しかった」
好奇心を刺激する味噌という食材。シェフのアイデアはどんどん膨らんでいく。
「味噌の塩分はアンチョビを使う料理にも応用できるでしょうし、※1タプナードに加えるのもいいでしょう。今回、研究のなかで、※2クレム シャンティも作ってみたんですけど、それも美味しかった(笑)」 味噌の可能性は無限大だ。
さらなるポイントは、マカロンの間に忍ばせたフランボワーズのコンフィチュール。「試作では桜のフレッシュさが表現できていなくて、納得がいかなかった。でも、フランボワーズのコンフィチュールで酸味とみずみずしさをプラスした途端、マカロンが生き生きと輝き始めました」
春が香る桜のマカロン。桜を浮かべたシャンパンと一緒に、ぜひ日本の春を感じて欲しい。
※1 タプナード=オリーブ、アンチョビ、ケッパーなどで作るペースト。
※2 クレム シャンティ=泡立てた生クリームのこと。ホイップクリーム。
右が白味噌で、左が赤味噌。白味噌は煮た大豆と蒸した米を合わせて作るが、赤味噌は大豆のみを蒸して作り、熟成期間も長期。
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