2017年2月27日、パリ-料理とホスピタリティマネジメントの国際的教育機関であるル・コルドン・ブルーは、卒業生の目から見た「2017年 世界の食のトレンド」を紹介させていただきます。
世界35カ所に広がる各キャンパスで学び、それぞれにプログラムを修了したル・コルドン・ブルーの卒業生たち。新鮮でシンプルな食材をこの上なく味わい豊かな一皿へと進化させる調理技術を磨き上げた人がいれば、レストランやツーリズム、ホスピタリティなど “食”業界とガストロノミーの世界に新たな視点を持ち込んだ人もいます。そんな彼ら一人ひとりのコメントには、消費者の興味や期待が反映されています。
世界各地で活躍するル・コルドン・ブルーの卒業生はフードライターやシェフ、そして食に関わる起業家などさまざまですが、彼らのコメントからは、食物が健康に与える影響への関心が高まったことを示唆する4つの顕著な傾向が見えてきました。
食欲はバランスを取る必要があり、そのためには健康的な習慣や環境への配慮、ライフスタイルの中心に“食”を据えることが大切です。数々の科学的根拠により、2017年の傾向から消費者がそれを理解していることが読み取れます。
腸の健康
最近の研究で、腸の健康が身体全体の健康にとって重要であることが明らかになりました。今後は腸内フローラ(細菌叢)を増やして自己免疫力を上げることがトレンドになるでしょう。その助けになるのは、食生活をゆっくりと確実に改善することによる栄養習慣です。
- 「マイクロバイオーム(微生物叢)と腸の健康によい食生活の話題がこれだけ増えているので、関連した料理本が出てくるでしょう。スーパーマーケットでも、ザワークラウトやキムチ、コンブチャ(紅茶キノコ)を使った炭酸水や飲料、調理済み食品を目にすることが多くなると思います」
Kathleen Flinn(アメリカ)/ジャーナリスト、ライター
- 「腸内のいわゆる善玉菌を増やすことが過敏性腸症候群や膨満感、免疫、活力や性欲低下の解決に役立つため、腸にやさしい料理についての話題が盛り上がっています」
Luiz Hara(イギリス)/シェフ、フード&トラベルライター、London foodie創始者
発酵食品
2016年の人気がそのまま継続しそうな発酵食品は、バランスのよい生活には腸内健康が大切であるという新認識と直結しています。サツマイモやヤムイモ、ユッカといった発酵性食物繊維、あるいはケフィアやヨーグルト、ザワークラウトやキムチなどが消費者の注目を集めるでしょう。
- 「発酵食品も存在感を増しているアイテムですね。流行というだけでなく、使う食材にシェフ独自の味付けができる。非常に可能性のある分野だと思います」
Jose Luis Cabañero(スペイン)/Eatable Adventures創始者
- 「食科学のバックグラウンドを持つ人間として、食べ物は健康にとって非常に大事であるとずっと信じてきました。良い食物が身体にいいのはもちろんですが、同時に美味しくて、喜びとなるものでなくてはいけません。さまざまな病気があふれる昨今、私は 安全で清潔、そしてバランスのいい料理に力を注いでいます。シェフとして、健康によくて美味しい一皿を作ることは、本当に嬉しいことなのです」
Montana Pawittranon(タイ)/コンサルタント、起業家
健康的で環境に配慮した食の探求
一皿の上で最高の組み合わせを提供するため、食材のひとつひとつが厳しく吟味され、栄養価や生産方法にもこだわって選び抜かれます。シェフがキッチンで食材にこだわることが美食家達の想像力を掻き立て、様々な味、色、そして食感の組み合わせにより一品を最大限に味合う楽しみを提供しています。多くの野菜がその品種の違いについて見直されているのも、その一例でしょう。
- 「人々は改めて食物に関心を持ち、自分たちが食べている物がどうやって作られ、どこから来たのか知りたがっています。ですから、自分の身体に栄養を与えること、そして加工・精製食品を消費することの影響についてもっと学びたいと思っているのです」
Adria Wu(イギリス)/Mint Velvetシェフ、Channel 4’s Sunday Brunchゲストシェフ、恵まれない女性たちの支援団体起業メンター、Maple & Fitz創始者
- 「アメリカでは、自分たちの食物がどこから来たのかということに今までにないほど関心が寄せられています。そのため、できるだけ地産のもの、その季節のものを食べるよう心がける傾向が見られます」
Susi Seguret(アメリカ)/プライベートシェフ、料理学校ディレクター、写真家、ワイン評論家
- 「“健康に良い”というのが一つのキーワードですね。例えばチョコレートなら、ビーントゥバーはもちろん、大手企業も高カカオのタブレットや健康機能を謳ったチョコレートを発売し、チョコレートそのものが重要な食材になっています」
中野 賢太(日本)/ダロワイユジャポン パティスリーシェフ 兼 製品開発室長
食の芸術体験
人が何を食べているか、ということに関心が集まっています。#foodがSNSで最も人気のあるハッシュタグの一つであることも不思議ではありません。ですから、料理やスナックの見せ方、ディテールが今まで以上に重要になってきています。
- 「かわいらしい手作りドーナツであれ、珍しいフレーバーのポップコーンであれ、個性的で美味しくて、どれだけ視覚的に魅力があるかがすべてです。SNSの存在はあまりにも大きいので、シェアしてもらうためには何もかも素敵に見える必要があるのです。実際に美味しいことはもちろんですが」
Peggy Porschen(イギリス)/Peggy Porschen Cakes創始者・クリエイティブ・ディレクター