東京校 パンビュッフェ - 2016年秋学期 -
フランスパン講座上級コースの生徒さんによるパンビュッフェが開催されます。
ル・コルドン・ブルー東京校 料理講座 シェフ講師 ジル・カンパニー
「日本は新鮮な食材が豊富ですね。また、日本料理の繊細な味つけやビジュアルセンスにも、とても刺激を受けています」
そう楽しそうに話す、3カ月前に来日したばかりのシェフ。テーマに選んだのは、日本でほれ込んだいう飛騨牛。清らかな水と澄んだ空気に恵まれた、飛騨地方の大自然でのびのび育ったブランド和牛だ。きめ細かでとろけるようにやわらかい肉質、そして芳醇な味わいを誇る。
「飛騨牛は比類なくノーブルな牛肉の最高峰だと思います。レシピを考えるうえで何より優先したのは、その素晴らしい風味を余さず生かし切ることです」
そこで、シェフが今回創作することにしたのはラビオリ。
「香りも肉汁も、すべて閉じ込めて口の中まで届けたいと思いました。」
「見てください!このきれいな網目状の脂を」
シェフが笑顔で取り出したのは、この日のために取り寄せたフィレ肉の塊。
「包丁で細かく切って詰め物を作りますよ。機械でミンチにすると脂をつぶしたり、余計な熱が加わったりして肉にダメージを与えてしまいます。上質な食材を最もいい状態で食べてもらうためには、手間を惜しんでいられません」
肉そのものの味を邪魔しないよう、つなぎは加えず、味付けは塩とコショウでシンプルに。生地は卵を使わずに、牛脂を混ぜて弾力をつけた。
「ラビオリのゆで時間は、詰め物のまわりに軽く火が通る1分30秒ほど。肉のジューシー感を味わえるように中はレアに仕上げます」
数種のキノコとマデラ酒で風味づけした鶏コンソメのソースには、隠し味に醤油を少々。味が引き締まり、美しい琥珀色が演出された。器にもこだわって、有田焼の新作を用意。ラビオリを盛り、まるで絵を描くように、色とりどりの小さな野菜とトリュフで彩った。小指の爪ほどのトマトを湯むきするなど、飾り付けにもシェフの細かな仕事が光る。
「日本料理で重んじられる白・黒・赤・黄・緑の5色の配色を意識しました。私から日本へのオマージュです」
完成したのは、花のように可憐な一皿。フレンチ×和の融合がモダンな印象も醸し出し、うっとり見とれてしまうほど。
「料理は五感で味わう芸術。料理に携わる者はアーティストでなければ。味も香りも色も、どうバランスをとって表現するかが肝心ですから」
ラビオリをひとつほおばると、肉汁の甘みがジュワッと溶け出し、飛騨牛のまろやかな旨みが口いっぱいに広がった。キノコの香りとさっぱりしたコンソメの風味がさりげなく肉のコクを引き立て、深い余韻を残す。極上のハーモニーを奏でる、主役と脇役の絶妙な配分に感嘆する。
「35年料理の世界にいますが、飛騨牛のような優れた食材との出合いには胸が躍りますね。 これからも、フレンチのアプローチで日本の食材の新しい魅力を引き出すことに挑戦していきたいです」
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